【生前とはいつのことか?】 家族がなくなったとき、葬儀の場には親族一同が集まります。 その場では、故人を偲んで思い出話に花を咲かせ、 「生前、私はおじいさんに大変お世話になりました」 などと言ったりします。 この生前は、故人が生きている時をさしますが、 「生きる前」と書くのに、生きている間をさすのは、 なんだか違和感がありませんか? 生まれる前なら母親の胎内とか、 前世を思い浮かべたりもしますが、違いますよね。 「生中」と書いたほうが、しっくりくるような気もします。 これには、様々な考え方があるようです。 昔は、「前」という漢字には、「前の時」のような 過去の意味もあったため、 「生前」とは、生きていたときを表す言葉となりました。 現在では、「前」と言えば、「○○より前」を表すので、 違和感があるのも仕方がないかもしれません。 他にも、仏教の考え方もあります。 「生前」の「生」は、「往生」の生ではないかという考え方です。 「往生」とは、死ぬことや天国に行って生まれることを意味します。 これだと、生前は死ぬ前や、天国に行く前をさすので、 その人が生きていた時を表すのも納得できますね。 【反物の語源】 反物とは、和服用の織物の総称のことです。 今は洋服が主流なので、あまりピンとはきませんが、 七五三や、卒業式、成人式など呉服店の店内を思い出してみてください。 着物は、完成された状態で売っているものは、 「留袖」「振袖」「訪問着」のみです。 それ以外は、着物を仕立てる前段階の布を、 巻物のようにくるくると巻いて売られています。 お店の中にある、巻物のような布を見たことはありませんか? あれが「反物」です。 反るもの、と書きますが、布が反っているわけではありません。 「反」は織物の長さの単位を表しています。 着物一着分に必要な生地が一反であり、 着物を何着作れるかによって、二反、三反、と数えていきます。 一反は、幅九寸(約34.1p)、 長さ二丈八尺(約10.6m)をさします。 「反物」は、着物一着分=一反を単位として、 生地の切り売りをしていたことから、こう呼ばれるようになりました。 ちなみに、着物のサイズは着る人によって変わってきます。 そのため、同じ一反でもその幅と長さは一定ではなく、 反物によって違います。 目安とされるサイズは、幅九寸五分(約36p)、 長さ三丈(約12m)で、「三丈物」と言います。 ただ、日本人の体格は昔と比べて大きくなっているため、 現在では、幅37〜38p、長さ12〜14m程度のものが 主流となっているそうです。 【丹前の由来】 丹前とは、防寒具の一種で、厚く綿を入れた日本式の上着のことです。 どてらとも言います。 旅館などで、外湯めぐりや、 街歩き用に用意されているところもあるでしょう。 「丹前」の由来は、江戸時代の有名な遊女「勝山」という人にあります。 当時、江戸の神田という場所には、多くの風呂屋がありました。 その中でも、一番の人気を誇っていたのが 「丹前」という湯女風呂でした。 堀丹後守の屋敷の前にあった湯女風呂なので、 「丹前風呂」と呼ばれていました。 湯女風呂(ゆなぶろ)とは、 湯女=接客を担当する女性が働いている風呂屋のことです。 丹前風呂では、容姿の優れた湯女が、 客の体を洗ったり、湯茶を接待したことから、 大変な人気を博していました。 その中でも、特に美人で有名だったのが「勝山」です。 人気ナンバー1だった彼女は、服装もお洒落で、粋でした。 腰に木刀をさし、派手な綿入れを着て歩くスタイルは、 男っぽい粋な着こなしで、注目を集めました。 このことから、「丹前風呂」の勝山が着ている綿入れを、 「丹前」と呼ぶようになったそうです。 また、彼女を目当てに通うお客が、 彼女に気に入られようと、こぞって変わった浴衣や着物を着ていたため、 そういった男性の装いを「丹前風」と呼んだことが由来だという説もあります。 【惑星は惑っているのか?】 惑星とは、恒星の周りを公転する、 自ら発光しない比較的大きな天体のことです。 太陽系では、水星、金星、地球、火星、木星、土星、天王星、 海王星をさします。 ちなみに恒星は、自ら発光し、相対位置の変化の少ないものをさし、 太陽も恒星の一種です。 惑星は、英語で言うと「planet」で、この言葉の語源は、 ギリシャ語の「さまよう人」「放浪者」です。 「planet」という言葉は、江戸時代に日本に入ってきました。 太陽のような恒星は、互いの位置関係をほとんど変えずに、 空を回っています。 太陽はずっと遠くにあるので、地球からは毎日同じように、 東から西へ移動します。 しかし、惑星は、恒星たちの動きから外れ、 ふらふらと惑うように動いていきます。 ループ状に動いたり、逆行したり、時には止まってしまうこともあります。 このことから、「惑星」と呼ぶようになったそうです。 惑うように見えるのは、惑星が地球と同じように、 太陽の周りを公転しているため、そう見えるだけで、 実際にふらふらとした動きをしているわけではないそうです。 「惑星」には、「遊星」や「行星」という呼び名もあったそうですが、 第二次世界大戦のあとから、「惑星」という呼び名が定着したそうです。 【「石油」はなぜ石の油と書くのか?】 石油とは、地下から産出する天然の原油、 およびこれを精製加工してできる液体燃料、 潤滑油などの石油製品の総称です。 現在石油は、重要なエネルギー源で、 身近なもので言えば、車のガソリンです。 ハイブリットでも、ガソリンは使われます。 ガソリンスタンドでは、ストーブなどで使う石油も売られていますが、 近年、価格の高騰が激しく、家計に大ダメージを与えています。 しかし、車や暖房器具は、使わないわけにはいかないので、 苦しい限りです。 さらに、値段が上がったものと言えば電気料金です。 電力のほとんどは、火力発電に頼っていて、石油は必要不可欠なのです。 他にも石油が欠かせないものはたくさんありますが、 石油は液体なのに、どうして「石の油」と書くのかは 意外と知らないものです。 石油は元々「石炭油」と呼ばれていました。 人が石油を使い始めるまでは、 石炭をエネルギー源として使っていました。 石炭を液状化すると、「石炭油」の出来上がりです。 従来の植物油、動物油に変わり、原油や石炭から 精製灯火用燃料(灯油)の製造が広まりました。 19世紀に入ると、今でいう「石油」が エネルギー源として使われるようになり、 「石油」も「石炭油」と呼ばれていましたが、 省略されて「石油」と呼ばれるようになりました。 【遊山の語源】 「物見遊山」という四字熟語を知っていますか? 若い人はあまり聞き慣れない言葉かもしれません。 「ものみゆさん」と読み、物見は物を見ること、見物を意味し、 遊山は、野山に遊びに行くこと、気晴らしに外出することを意味します。 紅葉の時期になると、雑誌やテレビなどで、 見かけることがあるかもしれません。 物見は、読んで字のごとくですが、 「遊山」という言葉は仏教に由来する言葉です。 本来は、禅宗の言葉で、 「遊」は自由に歩き回ること、「山」は寺のことをさしました。 「遊山」とは、禅宗の僧が一つの寺で修行を終えたあと、 またほかの寺へ修行の旅に出ることを言いました。 また、修行を終えた僧が、山にこもって悟りを得た後、 山の自然を楽しみながら、自由に散策すること、 美しい景色を見て心を整えること、なども意味するようになりました。 その後、修行の意味がなくなり、 自由に散策することの意味だけが残りました。 物見遊山という言葉は、江戸時代にはすでに使われていました。 当時、庶民が旅に出ることは厳しく制限されていましたが、 神社やお寺へのお参りの旅だけは許されていました。 やがて庶民は、お寺参りという大義名分のもとで、 その道中の旅を楽しむようになりました。 【地道とはどんな道のことか?】 地道とは、手堅く着実に物事を進めること、 地味でまじめなこと、などを意味します。 「彼は地道に勉強した結果、志望校に合格した」 毎日地道な努力を重ねてきたが、認めてもらえないなんて理不尽だ」 などと用いられます。 「地道」は、元々は馬術用語で、馬をゆっくり歩かせることを言います。 速足で歩かせることを「早道」と言い、地道は早道の対義語です。 「地道」は、馬を並足で進ませる基本の乗り方で、 安全で、疲れにくいです。 まずこれをマスターしなければ、先には進めません。 このことから、手堅く着実に物事をすすめること、 地味でまじめなことを表すようになったそうです。 地道には、冒険をしない姿勢などの印象も含まれているので、 人に対して使うと、堅い人というイメージを与えかねないので 気を付けてください。 「地道」は、漢字で書くと「地」の漢字を使うので、 ひらがなで書くと「ぢみち」と書きたくなりますが、 「じみち」と書くのが正しいフリガナなので注意しましょう。 また、馬術が語源の言葉は他にもあって、 「拍車をかける」とは、物事の勢いが増すことを言いますが、 これは馬の腹部に拍車をあてて、早く走らせることからきた言葉です。 【腹心の語源】 腹心とは、どんなことでも打ち明けて相談できること 深く信頼できること、また、そのような人、 心の奥底などを意味します。 「腹」は、おなかのことをさし、 「心」は心のこと、つまり胸を意味します。 「腹心」は、お腹と胸のことで、 体の中心にある大切なところを意味します。 このことから、「心の奥底」という意味が生まれました。 また、「腹」「心」は体の要となる部分で この部分をさらけ出せる相手という意味で、 信頼している相手をさすようにもなりました。 人ではありませんが、犬がお腹を見せる行為も、 相手に対して「腹心」を表しているのかもしれませんね。 言葉の使い方としてポピュラーなのは、 「腹心の友」や「腹心の部下」で、信頼できる友や部下を意味します。 他にも、腹心を使った言葉があります。 「腹心を布く」は、思っていることを隠さずに打ち明けること、 自分の本音を示すことを意味します。 「腹心之疾(ふくしんのしつ)」は、 命にかかわる危険な病気、大きな災害や大きな障害なども意味します。 内臓と心臓は、人にとって命にかかわる重要な部分なので、 こういった表現になるのですね。 【天王山の語源】 天王山とは、勝負を決める大事な局面、勝敗の分岐点、 天下分け目、運命の分かれ目のことです。 日本のプロスポーツ、野球やサッカーなどで、 「天王山」という表現を使うことがあります。 「日本代表は、果たして天王山を制することができるのか?」 このように、ここ一番の大勝負や、 優勝が懸かった大事な試合、という意味で使われる表現です。 天王山とは、標高270mの低い山で、 京都府の南部、乙訓大山崎町に実在します。 「天王山」は1582年に明智光秀と、 羽柴秀吉が行った「山崎の戦」が語源です。 本能寺の変で織田信長を討った光秀は、 織田の家臣が遠征でいないために、 こちらは戦力を整える余裕がある、と考えていました。 しかし、秀吉がものすごい速さで進軍し、光秀の軍と山崎で開戦します。 この戦の際、 古くから水陸交通の要地となっていた天王山を先に占拠した秀吉が 戦いに勝利し、 後に天下人として、名をはせることになりました。 天王山は、二人の戦国武将が天下をかけて戦った場所です。 このことから「勝敗の分かれ目」という意味で使われるようになりました。 なお、実在する現在の天王山は、 子供からお年寄りまで、気軽に楽しめる観光スポットで、 登山コースもあります。 【上品、下品の由来】 上品とは、品が良いこと、気品が高いことを意味し、 「上品な人ね」と言われたら、誰でもうれしくなるものです。 下品とは、品が悪いこと、人柄や様子が卑しいさまを表し、 「そんな下品な言い方はよしなさい」と、 子供のころに母親に注意されたという人もいるでしょう。 普段から、割と使っている「上品・下品」という言葉、 実は仏教用語だって知っていましたか? 「上品(じょうぼん)」「下品(げぼん)」は、 浄土宗の中の「九品(くほん)」からきた言葉だそうです。 これは、人間の品格を九つにランク分けしたもので、 このランクの善し悪しが、死後の行先にかかわってくるのです。 九品は、その人の生前の「人柄、性格、言葉遣いや行い」などの 「品格」を見て付けられます。 ランキングのトップが「上品」で、極楽浄土が約束されています。 次が「中品」で、最下位が「下品」となりますが、 「下品下生」の人とは、仏教を非難したり、 殺人を犯したりなど悪事を働いたもので、 地獄に落ちますが、最終的には阿弥陀仏に救われて、 極楽浄土へ行けるのだそうです。 このように仏教で使われていた言葉の 上品と下品だけが現在でも使われるようになりました。 【ホッチキスの発明者は機関銃も発明していた】 書類を止めたり、様々な用途で使える便利なホッチキス。 ホッチキスの発明者とされるのは、 アメリカのコネティカット州出身のベンジャミン・B・ホッチキス氏です。 実は彼は機関銃の発明家でもありました。 彼の機関銃は19世紀に発明されました。 そもそも機関銃は、15世紀にレオナルド・ダ・ヴィンチが考案した 多銃身砲がルーツであり 19世紀には手回しで銃身を回転させるもの、 発射反動を利用したものなどが次々に発明されました。 そんな中で彼の発明した機関銃は、とても画期的なものであり、 銃身内のガス圧を利用し、弾薬の供給ができ、 発射ともに自動化されていたのです。 ベンジャミンの機関銃は高い評価を受け、すぐに世界中に広がりました。 あの旧日本軍も日露戦争で使用していたそうです。 ちなみに、この機関銃の弾送りをヒントに ホッチキスの針送りが発明されたと言われています。 【ワイシャツの裾は昔パンツだった】 ワイシャツの形をよく見てみると、 裾の前後が長くなっており、 左右両横が短く、波のような形になっています。 これは、ワイシャツが昔はパンツとして男性に使用されていた名残です。 ワイシャツの裾は、1860年代のヨーロッパで 現在の形になりました。 それ以前には、中世ヨーロッパではアンダーウェアとしての パンツをはく習慣がなく、ワイシャツの裾を長くして、 包むようにして着用していました。 どのように着用していたかというと、 ワイシャツの裾の後ろ側のシャツテールに、 昔はボタンホールがついていました。 そして、前身頃の先にもついていたボタンと股の下で合わせ、 留めていました。 ズボンへの収納がしやすいように、 両脇の部分は短く、前後だけ長くなったといわれています。 今でいうふんどしのような状態です。 京都にある、京都服飾文化研究財団には、 当時のシャツが保管されています。 それをみると、股間にあたっていたであろう布の部分は、 茶色く変色しています。 もともと、シャツは下着としての機能の方が大きく、 クリーニング店もなかったため、 服を汚さないように、シャツを着て、 からだの汚れをシャツで受けていました。 【電車の中吊り広告の広告料は地下鉄の方が高い】 電車の中吊り広告には、 全く同じ内容、大きさでも、 地上を走る電車と地下で値段が違います。 実は、地下鉄の方が値段が高いのです。 中吊り広告にはサイズがあり、 通路一杯に広がるサイズをダブル、 その半分をシングルサイズと呼びます。 走る路線によっても広告料金は異なりますが、 関東圏を走る電車のシングルサイズで、 1日の料金を比較すると、 地上を走るJR線でもっとも安いのが、 京浜東北線であり、1枚あたり318円だそうです。 それに対して、 東京メトロは東西線系が506円、 都営地下鉄線は大江戸線が697円と、 京浜東北線に比べ非常に割高です。 では、なぜ地上と地下で広告料金の差があるのかというと、 広告への注目度の違いによるものだそうです。 地上を走る電車では、 風景があり、乗客は景色の方を見ることが多いのですが、 地下鉄は地上のように景色がないので、 広告も目につきやすいのです。 そういった理由で、 電車の中吊り広告の料金は、 地上を走る電車より、地下鉄の方が高いのです。 【健康器具のルームランナーは拷問用器具だった】 コロナで巣ごもり生活が続き、 ジムに行くひとも増えたことでしょう。 そんな中で最初にルームランナーから始める人も多いと思います。 ルームランナーは、コンパクトな設計で、 天気が悪くても室内で好きなだけ走ることができます。 様々な設定もできるので、 自宅用に買う人も最近は増えている、 人気の健康器具です。 そんなルームランナーは、元々はイギリスの拷問器具でした。 ルームランナーは和製英語で、 英語では「トレッドミル」といいます。 その意味は「踏み車」で、 英和辞典では「獄舎内で懲罰として用いていた」と記されてあります。 踏み車が誕生したのは、19世紀のイギリスのとある監獄で、 複数人で巨大な外輪を踏んで回す仕組みになっていました。 これは非常に過酷なため、すぐにイギリス中に広まり、 そのエネルギーは水をくみ上げたりなどする動力として 使われたと言われています。 1865年に制定された監獄法が廃止されると、 この踏み車も廃止されますが、 その後、健康器具としてランニングマシンが発売され 大いに人気となったわけです。 現在のルームランナーも、肉体的にも 精神的にも追いつめられることがありますが、 元々が拷問器具とわかると、 その辛さも納得できるものがありますね。 いかがでしたでしょうか。 今回は、言葉の由来・成り立ちに関する雑学を多めにお届けいたしました。 聞いてみたい雑学などありましたら、 コメント欄で教えていただけますと幸いです。 それではまたお会いしましょう。